『オクジャはどこ?』
             
ーー映画『オクジャ』より


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【あらすじ】
 
韓国の山奥で「オクジャ」と呼ばれる生物と楽しく暮らすミジャ。実はオクジャはアメリカ企業が見つけ繁殖させた【次世代の環境に優しいスーパーピッグ】であり、企業から一時的に預けられた家畜だった。だがオクジャを家族のように思うミジャは、祖父に頼みオクジャを買い取ってもらう。これで一安心かと思われた矢先、彼女たちのもとに良からぬ客人がやって来るのだった…

【上映時間】120分(R15指定)

【こういう人にオススメ】
 ・食育問題等に関心がある

 ・映画『ベイブ』が好きな人
 ・漫画『銀の匙』が好きな人
 ・三谷幸喜作品が好きな人
 ・王道ストーリーが好きな人

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今回は、最近『パラサイト/半地下の家族』でアカデミー賞作品賞を獲ったことで話題となったポン・ジュノ監督作品『オクジャ』を紹介したいと思います!

いや~アカデミー賞4部門獲った時は本当ビックリしましたね!
パラサイトは感想ブログとか見ても、感想を述べようとするとどうしてもネタバレなしで語れないというのが多かったので気になったのですが、ちょっと映画館に行く都合がつかなさそうなので、とりあえず同監督のNETFLIXで見られる『オクジャ』を見てみることにしました。


話自体は凄い王道です。もうあらすじから大体予想出来ると思いますが、お肉になりそうなオクジャを救え!ってだけの話です。
ですが、色彩・構図が素晴らしく、そこに加わるシニカルな笑いが本当面白い!
笑いに関して言うと、個人的に一番近いと感じたのは三谷幸喜監督の笑い。シリアスな場面で謎に明るいBGMが流れたり、登場人物全員違う方向性でやばいみたいなノリが終盤にさしかかるまで続きます。

色彩・構図に関してはもう見てもらうしかないんですが、序盤の山奥の描写が本当に美しく撮られています。そんな美しい自然の中で、女の子がCGのオクジャと戯れるんですが、ポスター見てるとなんていうかすごくトトロ。 ※実際宮崎駿を意識した所もあるそうです
このオクジャのCGも凄いクオリティで、本当にこの生物いそうなんですよ…(そして可愛いと家畜っぽいの混じり合った視聴者を何とも言えない気分にさせる絶妙なデザインが凄い。あと、主人公がオクジャを呼ぶ場面、凄い『人喰いの大鷲トリコ』(神ゲー)感あった)

ちなみにこの映画、R15指定なんですが極端にグロイ描写があるというわけではないです。
ただ、あらすじから大体予想出来るとは思うんですが、食肉工場が終盤出て来るのでそこが駄目な人はいるだろうな~といった感じです。

テーマがテーマなだけに食後に見ることをおススメはしますが、本当中盤まではじわじわくる笑いの嵐で面白かったです。
『パラサイト/半地下の家族』が話題の今、是非気になる方は見てみて下さい🐖


(※続きから、ネタバレ有り感想です)







山育ちを敵に回すと会社が潰れるので馬鹿にしてはいけない。

前回のダンボに引き続き、また一つの会社が終わった…
幼気な子供から動物を引き離すとな、会社が潰れる呪いがかかるんじゃよ…( ˘ω˘ )

序盤は可愛がってたオクジャを連れ去られて主人公の女の子可哀想…!
と思ってたら、会社のガラス戸体当たりでブチ破ってて、こいつマサラ人かよとすぐに考えを改めました。
しかもその後山育ちを生かして、オクジャ搬送するトラックに追いついてぶら下がるわでトム・クルーズばりの身体能力を披露。
他にも膝で看板を秒で叩き割るなど、敵に回したらやばさしかないことを予感させる主人公。

もうこのシーンだけでこの映画どうかしてるな…からのパリピ臭がすごいテロリスト登場。
しかしそいつらはまさかの動物愛護団体だったのです(監督の中の動物愛護団体のイメージあれだと思うと本当笑える)
必死にマサラ人少女とパリピ動物愛護団体から逃げるアメリカ企業。
しかし、目の死んだトラックの運転手に労災保険をかけてなかった(突然の韓国の重い社会問題)ばかりに裏切りに遭い、オクジャは逃げ出してしまう!
(※余談ですがこの目の死んだトラック運転手は以前紹介した映画『新感染』で野球部を演じた方で、パラサイトでも出演しているそうです)


逃げ出したオクジャが地下街を爆走するシーン、あれ普通にカバが突然現れて暴れてるみたいなもんなんで物凄い恐怖なんですが、その中で自撮りマスターが並走してるのシュールすぎますね。

色々あってパリピ動物愛護団体に助けられるマサラ人少女。
しかし彼らには思惑があり、英語が堪能でなかったばかりに少女はアメリカに行くことに。

そう、これは英語学習促進映画だったのです。


ちなみにこのパリピ動物愛護団体、意外にも優秀で動物への慈愛に満ち溢れているんですが、人間に関しては異常なまでに手が早く、殴る・気絶させるスキルはお手の物!


こっからはアメリカに行って、少女にとっては過酷な食肉工場に行くわけですが、中盤までのテンションの差で風邪引きそう。テーマがテーマなだけに大事な場面なんですけどね。

ペットと家畜の線引きって本当に難しい問題ですよね。
主人公はオクジャを凄く可愛がっている一方で、家で飼っているニワトリは完全家畜とみなしていて、好物がニワトリを使った料理なんですよ。この辺をさりげなーく入れて来るのが監督上手い。
ちなみに監督自身はこの映画に関して、別に菜食を推奨しているわけではないが、屠殺システムには疑問を持っているとインタビューで答えています。
食べている以上、本当はこの問題って向き合わないといけないんでしょうけど、農家目線で描かれている漫画『銀の匙』でも、屠殺に関しては見る・見ないは個人の判断に任せていたように、強要すればいいって問題でもないんですよね。むしろ下手すると過激なパリピ愛護団体になりかねない。

食べる食べないを、生物の知能で決めるのか、味で決めるのか、それとも感情で決めるのか。

この辺はどーしても人間のエゴが入ってくるので本当に正解がありませんね。
今回悪役に描かれた企業も、落ち度があるとはいえ、別にやってることはフツーですからね。オクジャも連れ去ったわけじゃなく、元々企業側の物ですし。主人公もその辺は分かっているので、ラスト黙って金で解決して(改めて凄い女の子だなこの子…)オクジャと共にアメリカを去るわけで…。
なんかこの辺考えると、生態系な意味でも放し飼いにしていた主人公の祖父が一番問題あったのでは

まぁオクジャを食べたいかって言われると、序盤の主人公を助けるシーン見てても、コイツ緊急時の判断がもはや平均的な人間より余程知能高くないか?むしろオクジャさんとお呼びしなければならないのでは?という感じで何とも言えない気持ちですね…


120分という映画の中でも長い方にはいる作品ですが、長いな~と中だるみを感じることなく涙あり笑いありで一気に視聴出来ました。
現在NETFLIXで観ることが出来るので、興味のある方は是非見てみて下さい。ちなみにED後のCパートもあるので、最後までお忘れなく🐖